脂漏性脱毛症とAGA(男性型脱毛症)の違いと併発

脂漏性脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は、どちらも薄毛を引き起こす代表的な原因ですが、その発症メカニズムや症状の現れ方には違いがあります。しかし、時にはこれらが併発し、薄毛の悩みをより深刻にすることもあります。まず、AGA(男性型脱毛症)は、主に遺伝的要因と男性ホルモンの影響によって引き起こされる進行性の脱毛症です。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛乳頭細胞の受容体に結合することで、髪の成長期が短縮され、毛髪が細く短くなり、最終的には抜け落ちてしまいます。AGAの典型的な症状としては、前頭部の生え際の後退(M字型)や、頭頂部の薄毛(O字型)が見られます。一方、脂漏性脱毛症は、頭皮の皮脂の過剰分泌と、常在菌であるマラセチア菌の異常繁殖によって引き起こされる頭皮の炎症(脂漏性皮膚炎)が原因で起こる脱毛症です。炎症によって毛穴が詰まったり、毛根がダメージを受けたりすることで、健康な髪の成長が妨げられ、抜け毛が増加します。脂漏性脱毛症の場合、AGAのように特定の部位から進行するというよりは、頭皮全体に広範囲にわたって薄毛が見られることが多く、フケ、かゆみ、赤みといった脂漏性皮膚炎の症状を伴うのが特徴です。このように、AGAと脂漏性脱毛症は発症メカニズムが異なりますが、実際にはこれらが併発しているケースも少なくありません。例えば、元々AGAの素因を持っている人が、不規則な生活やストレスなどによって皮脂の分泌が過剰になり、脂漏性皮膚炎を発症すると、AGAの進行を早めたり、薄毛の症状をより悪化させたりする可能性があります。また、脂漏性皮膚炎による頭皮の炎症が、AGAの治療薬(ミノキシジルなど)の浸透を妨げ、効果を十分に発揮できないといった状況も考えられます。もし、薄毛の症状に加えて、頭皮のベタつき、フケ、かゆみといった脂漏性皮膚炎の症状も見られる場合は、自己判断せずに皮膚科を受診し、正確な診断を受けることが重要です。医師は、それぞれの原因に応じた適切な治療法(AGA治療薬、抗真菌薬、ステロイド外用薬など)を組み合わせることで、より効果的な薄毛対策を提案してくれるでしょう。