タンパク質やビタミンと並んで、育毛において非常に重要な役割を果たすのが「ミネラル類」です。ミネラルは、体の機能を維持・調整するために不可欠な栄養素であり、髪の毛の成長や健康にも深く関わっています。特に育毛との関連で注目したいミネラルが「亜鉛」と「鉄分」です。まず「亜鉛」は、髪の毛の主成分であるケラチンタンパク質の合成に不可欠なミネラルです。亜鉛が不足すると、ケラチンの生成がスムーズに行われなくなり、髪の毛が細くなったり、成長が遅れたり、抜け毛が増えたりする原因となります。また、亜鉛は細胞分裂や新陳代謝を活発にする働きもあり、毛母細胞の活動をサポートします。さらに、AGA(男性型脱毛症)の原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)を生成する酵素「5αリダクターゼ」の働きを抑制する効果も期待されています。亜鉛を多く含む食べ物としては、牡蠣が特に有名ですが、その他にもレバー、牛肉(赤身)、豚肉、鶏肉、卵黄、チーズ、大豆製品、ナッツ類、ゴマなどがあります。亜鉛は体内で吸収されにくいミネラルの一つですが、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂取すると吸収率が高まると言われています。次に「鉄分」も、育毛には欠かせないミネラルです。鉄分は、血液中のヘモグロビンの主要な構成成分であり、全身の細胞に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。頭皮や毛母細胞も、活動するためには十分な酸素が必要です。鉄分が不足して貧血状態になると、頭皮への酸素供給が滞り、毛母細胞の働きが低下して、髪の成長が悪くなったり、抜け毛が増えたりする可能性があります。特に女性は、月経によって定期的に鉄分を失うため、鉄欠乏性貧血になりやすく、薄毛の原因の一つとなることがあります。鉄分には、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は吸収率が高いのが特徴で、レバー、赤身の肉、魚介類(カツオ、マグロなど)に多く含まれています。非ヘム鉄は、ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品などに多く含まれており、ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂取すると吸収率が高まります。亜鉛も鉄分も、体内で作り出すことができないため、食事から意識して摂取する必要があります。バランスの取れた食事を心がけ、これらのミネラルを効率よく補給することが、丈夫で健康な髪を育むための鍵となります。