「縮毛矯正をすると薄毛になる、あるいは薄毛が目立つようになるのではないかというご相談は、確かにお客様から時々いただきます」と語るのは、都内で人気の美容室に勤務するベテランスタイリストのAさんです。「まずご理解いただきたいのは、縮毛矯正の薬剤や施術が、直接的に毛根を破壊して髪の毛を生えなくするということは基本的にありません。AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)といった薄毛は、ホルモンバランスや遺伝、生活習慣などが複雑に関与して起こるものであり、縮毛矯正がその根本的な原因となるわけではないのです。しかし、施術方法や髪の状態によっては、結果的に薄毛が目立ちやすくなるケースがあるのは事実です。例えば、元々髪の毛が細い方や猫っ毛の方が縮毛矯正をかけると、くせによるボリュームがなくなることで、ペタッとした印象になり、地肌が透けて見えやすくなることがあります。これは、髪の量が減ったのではなく、ストレートになることで全体のシルエットがコンパクトになったためです。また、最も注意が必要なのは、髪へのダメージです。縮毛矯正は、髪の内部の結合を切断し、再結合させるという化学的な処理を行うため、どうしても髪に負担がかかります。特に、既にダメージが進行している髪に無理な施術をしたり、短期間に何度も繰り返したりすると、髪が極度に乾燥したり、タンパク質が流出して細くなったり、最悪の場合は途中で切れてしまう『断毛』を引き起こしたりすることがあります。これが、結果的に毛量が減ったように見え、薄毛感を強調してしまうのです。私たち美容師は、お客様の髪質やダメージレベルを正確に見極め、最適な薬剤選定と施術時間を心がけています。また、頭皮への薬剤の付着を最小限に抑えるための保護や、施術後のトリートメントケアも非常に重要です。お客様自身にも、ホームケアでの保湿やダメージケアをしっかり行っていただくことで、縮毛矯正後も健康な髪を維持しやすくなります。もし、縮毛矯正後の薄毛感が気になる場合は、遠慮なく担当の美容師にご相談ください。髪型やスタイリング方法の工夫で、気になる部分をカバーすることも可能ですし、今後の施術プランについても一緒に考えることができます」。