原因不明の薄毛や抜け毛に悩んでいる場合、その背景に甲状腺機能の異常が隠れている可能性があります。特に、薄毛以外にも体重の変化、動悸、倦怠感、むくみといった全身症状が見られる場合は、一度、甲状腺の検査を受けてみることをお勧めします。甲状腺の検査は、主に血液検査によって行われ、比較的簡単な手順で甲状腺の状態を把握することができます。血液検査では、主に以下の項目を測定します。まず、「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」です。TSHは、脳下垂体から分泌されるホルモンで、甲状腺に対して甲状腺ホルモンを分泌するように指令を出す役割を担っています。甲状腺機能が低下していると、TSHの値は高くなり、逆に甲状腺機能が亢進していると、TSHの値は低くなります。TSHは、甲状腺機能異常のスクリーニング検査として非常に重要な指標となります。次に、「FT4(遊離サイロキシン)」と「FT3(遊離トリヨードサイロニン)」です。これらは、実際に甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンで、血液中を循環し、体の各組織に作用します。FT4は甲状腺ホルモンの主要な形態であり、FT3はより活性の高い形態です。甲状腺機能亢進症ではこれらの値が高くなり、甲状腺機能低下症では低くなります。さらに、自己免疫疾患が疑われる場合には、「自己抗体」の検査も行われます。バセドウ病の場合は「TRAb(TSH受容体抗体)」や「TSAb(甲状腺刺激抗体)」、橋本病の場合は「抗サイログロブリン抗体(TgAb)」や「抗TPO抗体(マイクロゾーム抗体)」などが測定されます。これらの自己抗体が陽性であれば、自己免疫性の甲状腺疾患である可能性が高まります。これらの血液検査の結果を総合的に判断することで、甲状腺機能が正常か、亢進しているのか、低下しているのか、そしてその原因が何であるのかを診断することができます。もし甲状腺機能の異常が見つかれば、早期に適切な治療を開始することで、薄毛の症状を含む全身症状の改善が期待できます。薄毛の悩みを抱えている方は、AGAやFAGA、生活習慣の乱れなど、様々な原因を考えがちですが、甲状腺疾患という可能性も視野に入れ、気になる症状があれば、まずは内科や内分泌内科の専門医に相談し、甲状腺検査を受けてみることを検討しましょう。早期発見・早期治療が、健康な髪と体を取り戻すための第一歩となります。