「はげ」と聞くと、多くの方が前頭部の生え際の後退(M字型)や頭頂部の薄毛(O字型)をイメージするかもしれません。しかし、意外にも「後頭部がはげてきた気がする」という悩みを抱える方もいます。後頭部は自分では直接見えにくい部分だけに、ある日突然、家族や美容師に指摘されて気づくケースも少なくありません。一般的に、AGA(男性型脱毛症)の典型的な進行パターンは前頭部や頭頂部から始まるため、後頭部のはげはAGAとは異なる原因が潜んでいる可能性があります。後頭部のはげの原因としてまず考えられるのが、「脂漏性皮膚炎」や「接触性皮膚炎」といった頭皮の炎症です。脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌とマラセチア菌という常在菌の増殖によって引き起こされる皮膚炎で、頭皮に発症するとフケ、かゆみ、赤み、湿疹などが現れます。この炎症が慢性化し、毛穴の詰まりや毛根へのダメージを引き起こすと、後頭部を含む広範囲に脱毛が生じることがあります。また、シャンプーやリンス、整髪料、ヘアカラー剤などが頭皮に合わず、アレルギー反応や刺激によって接触性皮膚炎を起こした場合も、炎症部分の毛髪が抜け落ちることがあります。次に、「円形脱毛症」も後頭部にはげができる原因の一つです。円形脱毛症は、自己免疫疾患の一種と考えられており、免疫細胞が誤って毛根を攻撃することで、円形または楕円形の脱毛斑が生じます。脱毛斑は一つとは限らず、多発することもあり、後頭部にも現れる可能性があります。ストレスや疲労、遺伝的要因などが関与していると言われています。また、「牽引性脱毛症」も後頭部の薄毛に繋がることがあります。これは、ポニーテールやきついお団子ヘアなど、髪を長時間強く引っ張り続ける髪型によって、毛根に継続的な負担がかかり、特に髪の生え際や結び目の周辺が薄くなる脱毛症です。後頭部の下の方で髪をきつく結ぶ習慣がある方は注意が必要です。さらに、生活習慣の乱れによる「頭皮環境の悪化」も無視できません。睡眠不足や栄養バランスの偏った食事、ストレスなどは、頭皮の血行不良や皮脂の過剰分泌を招き、健康な髪の成長を妨げ、後頭部を含む全体の薄毛を進行させる可能性があります。稀なケースではありますが、甲状腺疾患などの内科的な病気が原因で、後頭部を含む全身の毛髪が薄くなることもあります。