僕は昔から、自分の頭皮が乾燥しているという自覚があった。特に冬場になると、フケが気になり、時々無性にかゆくなる。黒いスーツを着ると、肩に落ちた白い粉が目立つのも悩みの一つだった。でも、それは単なる体質だと思い込み、特に深刻には考えていなかった。市販のフケ用シャンプーを使えば、一時的には良くなる。その程度の認識だった。そんな僕が、自分の頭皮問題と真剣に向き合うことになったのは、35歳を過ぎてからだ。明らかに、髪の毛が細くなり、セットしてもすぐにぺたんこになってしまう。そして、シャンプー後の抜け毛が増えた。まさか自分が薄毛に?焦った僕は、インターネットで情報を漁り、ある言葉に衝撃を受けた。それは「頭皮の砂漠化」というフレーズだった。記事によると、頭皮が乾燥している状態は、まさに植物が育たない砂漠と同じ。水分が不足し、バリア機能が低下した頭皮では、毛根が十分に栄養を吸収できず、健康な髪を育てることができない。さらに、乾燥によるかゆみで頭皮を掻きむしることは、毛根に物理的なダメージを与え、抜け毛を助長するという。僕のこれまでの悩み、フケとかゆみは、まさに薄毛への危険信号だったのだ。愕然とした僕は、その日からヘアケアを根本から見直すことを決意した。まず、洗浄力の強すぎるシャンプーをやめ、アミノ酸系のマイルドなものに変更。そして、これまで使ったことのなかった「スカルプトリートメント」を導入した。セラミドやヒアルロン酸といった保湿成分が配合された、頭皮専用の保湿剤だ。毎晩、シャンプーの後に頭皮に塗り込み、マッサージする。最初は半信半疑だったが、一週間もすると、あれほど悩まされていたかゆみがぴたりと治まった。一ヶ月後には、フケもほとんど出なくなった。僕の頭皮という砂漠に、ようやくオアシスが生まれたような感覚だった。まだ髪の量に劇的な変化はない。でも、健やかな土壌がなければ作物が育たないのと同じように、まずはこの頭皮環境を維持していくことが、未来の自分の髪への、何よりの投資だと信じている。
頭皮の砂漠化が薄毛を招くと知った日