AGA（男性型脱毛症）の症状というと、多くの人は「抜け毛の増加」や「生え際の後退」といった、目に見える量の変化を思い浮かべるでしょう。しかし、それとほぼ同時に、あるいはそれよりも早く現れる、非常に重要なサインがあります。それが、「髪質の変化」です。具体的には、髪の一本一本が細くなり、ハリやコシが失われ、弱々しくなっていく「軟毛化（なんもうか）」と呼ばれる現象です。AGAが進行すると、脱毛ホルモンDHTの影響によって、髪の毛の成長期が、本来の数年間から、わずか数ヶ月から一年程度へと、極端に短縮されてしまいます。これにより、髪の毛は、太く長く、たくましい「硬毛」に成長する時間を与えられず、まだ未熟な、細くて短い「軟毛（産毛）」のまま、その一生を終えて抜け落ちてしまうのです。この軟毛化が、薄毛が気になる部分で進行することで、様々な自覚症状として現れます。例えば、「髪全体のボリュームが減った」と感じるのは、髪の本数が減ったからだけでなく、一本一本が細くなったことで、全体の密度が低下しているためです。また、「スタイリングがうまく決まらない」「髪がぺたんと寝てしまう」という悩みも、髪にハリやコシがなくなり、自重を支えきれなくなっていることが原因です。さらに、髪が細くなることで、光が透過しやすくなり、同じ本数でも「地肌が透けて見える」ようになります。そして、シャンプーの後や枕元で、細く短い抜け毛が目立つようになったら、それは軟毛化が進行している、かなり確かな証拠と言えます。この髪質の変化は、AGAの進行度を判断する上で、抜け毛の本数以上に重要な指標となります。なぜなら、それはヘアサイクルが乱れ始めているという、AGAの根本的なメカニズムが、あなたの頭皮で現実に起きていることを示しているからです。この静かな、しかし確実な変化に、いかに早く気づけるか。それが、早期対策への分かれ道となるのです。